637、665年 インドの踊り子

昨日から、蛮刀で左腕を切り落とされるイメージがあるので
それ何?と思って瞑想CD。
今日のでかい鏡は何だか水みたいな感じだ。
小さい鏡の方は、ダークブラウンので彫刻をされた木の枠に、六角形みたいな鏡がはめ込んであった。
木の枠と同じブラウンの肌の女性の手が出ている。
いっぱいアクセサリーを付けていて、私をつかんで引っ張りこんだ。
 
気がつくと、草の上に立っている。
木の影が、その草の上に落ちているのが見える。
私の肌の色は、先程の女性の手と同じブラウンで、私も女のようだ。
裸足でいる。自分の服の裾が目に入る。風に揺れている。
665年、今でいう、ニューデリーのあたりだという。
もう一度聞くと、637、という。何の年だ?
高いところに居るのか、土壁でできた建物が遠くに見えた。
町の外れなのかもしれない。
私は誰だ?と訊くと、サ、サジャなんとか、という。
それを聞きながら、場面が変わった。
 
白いターバンを巻いた男性が位置の高い主人の席に座ってこちらを見ている。
それを一瞬だけ見て、私はさっと膝をついた。
膝をついた床は、石でできている。
なんだか金持ちか、権力のある人の家に呼ばれたようだ。
唸るような歌声が聞こえて、それを弦楽器の音が追う。
私はゆっくりと立ち上がりながら、腕をさっと後ろに振る。
腕につけた鈴が鳴り、上に羽織った薄い布が中を泳ぐ。
私は斜め下を見るような半眼のまま、舞う。
踊り子のようだ。
祈りのように舞う。
頭の中に考えを入れないように、風のように舞う。
これから起こることを分かっているようだった。巫女のようなものなのだろうか。
この後、私には、良くないことが起こることを知っている。
しかしこれは決まり事だ。起こるようになっている。
それに従う。
それが、世の流れ、運命だ。
私が目をあげるとき、そら!起こった!
 
トン!と拍子が入る時の振り付けで目を挙げると、
蛮刀を振り上げた男が、こちらに向かってきた。
この男は、私の後ろに位置するこの席の主人に切りかかろうとしているようだ。
この男は、私と一緒に舞う仕事をしてるようだった。
「ナラダ!!」と私は男の名前を叫び、主人の前に躍り出た。
私は切られるのだ、分かっていた。
男は私の行動に驚いて、そのまま行けば頸もとから刀を下ろすところを、
私の左腕、肩の少し下から下に向かって思い切り振り下ろすことになった。
自分が、ギャーッと叫ぶと同時に、自分の左腕が私に掌を見せた状態のままで、左前に飛んだのを見た。
場が騒然となり、その場にいた女たちの半分と何人かの男は逃げ去り、残りはわーっと主人の所へ集まった。
ナラダは青い顔をしている。一瞬後ろに下がった後、私にさっと駆け寄って抱き起こすと、私の舞い用の布で血の滴る腕を力任せに縛った。
私の後ろで、主人が剣を鞘から抜く音がした。
私は痛みで目を閉じたまま、「御身を穢してはなりません!」と叫んだ。
人が集まってきて、ナラダを捕らえようと人垣が狭まってきた。
私はナラダに、「おまえは生き長らえる。すべて定め通りだ」と耳打ちした。
ナラダは私から引き剥がされ、男たちに連れて行かれた。
私は、残った人に手当てされたようだった。
 
私は主人を守ったことで、褒美を受け取ったらしい。
主人の館の、まあまあいい部屋に居させてもらっていた。
傷はかなり良くなって、左腕の二の腕あたりの先が丸くなっている。
傷口がふさがっているところを、ゆっくりなでるとジジジ、と痛みがした。
私は元々が放浪の身であるのか、どこかに行く準備をしていた。
右手だけで顔を洗い、左手用のアクセサリーはもういらないな、
左腕というのは、結構重いものだったのだな、などと思った。
肩が残っていて良かった、ずいぶん違う。
 
場面が変わった。
土の上に寝て、空を見ていた。
喉から、ヒュー、と空気が出て行った。
若い男が、私の顔を覗き込んで「ばあさん、死ぬのか」と訊いた。
私は「ああ、あさって」と答えた。