花火

昨日、うっかり花火大会の会場に迷い込んでしまった。
やらかした日に、日傘のことなど完全に忘れてレストランに置いてきたのを回収してきた。
その帰り、いつも通り公園を突き抜けようとして、はまり込んだ。
その公園の一年で最も人出の多い日で、ものすごい音の花火の中、全く身動きが取れない。
フェルトセンスが「公園に入ってはいけない、遠回りしても公園の外側を通って帰りなさい」
と言っていたが、ふと、公園を抜けられそうな道を見つけてウッカリ入ってしまった。
公園に入る前から、異様に自分が花火の音を恐れていることに気がついた。
ドーン、という音ごとに目を閉じる。
今までは、こんなこと平気であったのに。
むしろ、雷できゃあきゃあ言うぐらいだった。
 
人ごみで動けない中、これだから人ごみに慣れてない奴は歩くのが下手なんだよ!という怒りが噴出する。
その怒りで、この状況が怖くてしょうがないのを隠しているのも感じる。
誰かの飲み残しが、サンダルでむき出しの踵にかかったが、見ることもできないほど込んでいる。
ラッシュ時の有楽町線を思い出す。
 
ドン、と物凄い大きい花火を見て、怖くて泣きそうになったとき、
「あっ、これは3歳の時の記憶だ」
と思い出す。
怖くて親にしがみついたが、鼻で笑われた上に、周りの大人にも寄ってたかって笑われて、ほらほら、と花火の方に突き出され、萎縮したのを思い出した。
こんなに昔の記憶を今思い出すとは。
とにかく、この場から逃れようとどうにか糸一本のような道を見出して、公園から這いずるように逃げ出した。
見捨てられる不安を思い出したのだろう。